初恋の物語
次の日、昨日の間に何度か楓から電話やメールが来ていたけど全て無視して、駅に向かった。

楓にあっても何を話せばいいのかわからない。

駅のホームで電車を待っていると後ろから俺を呼ぶ声がした。

「創太久しぶり」
後ろを振り向くとそこには女の子が立っていた。

「遥？ 中野遥か？ 久しぶりだな」
雰囲気が変わっていて一瞬だれかわからなかったがそこには中学の同級生の中野遥がいた。

「ずいぶん変わったな。一瞬だれかわからなかった」

「ひどっ、私そんなに変わった？」

「大人っぽくなってて気づかなかったんだよ」

「ふーん、一応褒めてくれてるのかな」

実際、中学の時の彼女は背が低いせいかもっと子どもっぽいイメージがあった。

「中学の卒業式以来だな。同じ駅を使ってるなんて知らなかった」

「ウチの学校は進学校だから朝が早いんだ。今日は寝坊のせいでおくれたの」

「そういえばおまえ頭は良かったもんな」

「頭はってどうゆう意味よ」
彼女のツッコミに思わず笑ってしまった。

久しぶりに話す彼女との会話は楽しくて、あっという間に電車が来る時間になってしまった。

そこで俺はこのまま彼女と話しながら電車に乗って楓に嫉妬させてやろうと思った。

ほんの少し、昨日のやり返しのつもりで。

電車に乗ると驚いたようにこっちを見ている楓と目があったがそのまま遥と会話を続けた。

学校近くの駅に着いたので遥に、
「じゃあな」
とだけ言って電車を降りた。

降りた時に小さなこえで「バカ」と聞こえたので振り向くと楓の目から涙がこぼれていた。

そこでようやく俺は罪悪感を覚えたが扉は閉まり電車は次の駅へ行ってしまった。
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