拾った彼女が叫ぶから
「外出は控えるように言いませんでしたか? どうやってここまで? その服、馬で来たんですか? 全く、無茶をするんですから……目を離せないじゃないですか」

 彼の手が、するりとマリアの頬を撫でる。「……無事で良かった」とぽつりと呟き、再び頬を撫でた。その指先がおとがいにくいと掛けられ、マリアは促されるように彼を見上げた。熱っぽい視線とぶつかる。

 ──この目を失いたくなくて、ここまで来たんだから。
 いつも、どうしたと聞いてくれる。マリアを待ってくれる人だからここまで来たのだ。

 気が急いて手にじっとりと汗が浮かんでいる。言いたいことは沢山あるのに、上手くまとめられない。
 もしかしてこの方がルーファスを説得してパメラ様と引き合わせようとしてたところだったのかもしれない。
 それなら今しかない。
 今のこの勢いでしか言えない。乗馬服とはいえ、王宮で貸してもらった衣装で助かった。これが、いつもの着古したワンピースだったら、それこそマリアはこの部屋に辿り着く前につまみ出されていただろう。マリアは震える手をブラウスの首元に当てる。
 この琥珀色の宝石にどうか勇気をくださいと願う。彼の目と、同じ色の石に。
 ──ええい、言ってしまえ!



「あんたが私を拾ったんでしょう。ちゃんと最後まで、責任取ってよ……!」

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