ブレイン・ハイジャック【ゾンビホラー】
「中に入ってゆっくりしましょ」

 食べ物もあるよと促され、俺と一口は空腹であることを思い出す。

 モリスはあっという間に遠ざかり、すでに食べ物を要求していた。

 体育館には避難所に相応しく、ひと世帯分ごとに区切られていて、毛布や荷物が並べられていた。

「大変だったねえ」

「こっちにコーヒーがあるよ」

 優しい言葉に涙が出そうだった。

 今までは、人の多さにあんなに嫌気がさしていたのに、今はなんだか暖かい。

 俺たちはとりあえずひとまとめにされ、毛布など支給品を与えられた。

 そうこうしていると、外から水音が響いてくる。とうとうか。

「あ、雨降ってきたね」

 一口はしょげながら上にある窓を見る。

 三人だけでいたなら、どんなに不安だっただろうかと、彼女と出会えたことに感謝した。

 俺たちは疲れていたのか、夜も待たずに眠気に襲われ、我慢出来ずに毛布にくるまって意識を遠ざけた。




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