ブレイン・ハイジャック【ゾンビホラー】
──こんな状況なのに、早苗に何の感情も湧かないのは不思議かもしれない。
種の保存において、絶滅の危機的状況にこそ発揮される生殖能力がまったく発動されない。
生き残りは必ずいるという想いからなのか、男が三人いると無意識に牽制し合う形になっているからなのか。
「これって、逆ハーレム状態だよね」
などと、早苗のふざけた言葉に俺たちは怒るでもなく、互いに苦笑いを浮かべる。
モリスの友人も食われているのか寄生されているのか、やり取りをするたびに一人ずつ減っていっているようだ。
それに、やりきれなさは感じても、どうすることも出来ない。そんなもどかしさがモリスから伝わってくる。
俺たちは生き残るために互いに協力し、利用しあっている。それを充分に理解している。一人より二人。二人より三人だ。