ブレイン・ハイジャック【ゾンビホラー】
「あとは任せたぞ」

 振り返り、いい笑顔を見せる。

「モリス? お前なに言って──」

 そこで俺はハッとした。

 モリスが手に持っているのは紛れもなくあれだ。なんだってそんなもの持ってるんだよ。

 あれを持っているってことは、あれをするんじゃないだろうな。おい、そんな定番な死に方するんじゃない。

「やめろモリス。モリス──!」

 手に収まる深緑の塊からピンを抜いたモリスは、早苗に駆け寄って力強く抱きしめた。

「なにをする!」

「じゃあな!」

「モリスー!」

 俺たちは叫びながらも咄嗟(とっさ)にゾンビを盾にした。

 さほど大きくない爆発だったが、二人を吹き飛ばすには充分だった。様子を窺っていると、どちらもまだ息はあるものの致命傷だろう。

「なんだって、こんなこと」

 まだ息のあるモリスを抱き上げる。

「どうせ、おまえには無理、だった、ろ」

「だからってこんな」

「死ハ、スベカラク、誰ニデモ、オトズレルベキ、モノデース」
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