【短編】あなたとの距離、近くて遠い
「おはようございます。昨日よく眠れましたか?」
女性だと思って顔を上げたら、男性看護師だった。看護師は女性が多いイメージだが、男性看護師を見るのは新鮮だ。
「あ、はい」
私は声を発して、男性看護師に言った。
「今日から担当することになった久保田慧(くぼたけい)です。よろしくお願いします」
男性看護師の方を見ると、ペコッとお礼をした。
「あ、はい」
私は茫然としながら久保田さんを見ていた。
すると、その視線に気づいたのか。
「…あの、何か付いてます?」
目を丸くして久保田さんは、私を見てきた。
「……いや、なんでもないです」
この人、なんかいい。いや、よくわからないけどいい。いい。そんなことを考えてたら、久保田さんが声を発した。
「今から血圧測りますね」
そう言い、久保田さんが持ってきた血圧計を私の右手で測り始めた。