【短編】あなたとの距離、近くて遠い
それから急に眠くなってきて、ベッドで横になった。
何時間経っただろうか、目をパチリと開けて周囲を見合わせた。
誰もいない。
シーンと静まっていた。
静かだ。
いつもは、実家暮らしなので、家族がいる。
でも、今日は一人だ。ひとりは、慣れているはずなのに。
なぜかさびしくなっていた。感じたことのない無力感。
ベットに横になって、夕食を待った。
すると、花野さん、花野さんという声が聞こえた。
目を開けると、助看護師の方が食事を持ってきてくれた。
「あ、起こしちゃった。ゴメンね。もうご飯だから起こした方がいいかなと思って」
准看護師の方が疲れた顔をしながらも、笑顔で私に言ってくれた。
それがなにか嬉しくなって、涙が出そうになった。
「いや、起こしてくれてありがとうございます」