レヴィオルストーリー2
『“ゼウスの証”…。あぁ、壊されたから怒ったのね?』
女性はクウェンナの首から下がる鎖を指先に絡めると、それを彼の服の中から引っ張りだした。
クウェンナはヒッとびくついて女性のオッドアイを見上げる。
『壊さないわ。直してあげる。』
艶やかに微笑んだ女性はそれから何かを呟くと、綺麗な指先で黒い宝石の亀裂をなぞった。
その動作が終わり手を離すと、壊れたそれは元の通りの形に戻っている。
『ありがとうございます…』
クウェンナは女性に礼を言うと、膝を折って頭を下げた。
家来と御主人様みたいだ。
アレンはそう思いながらも女性を直視することができない。
さっきあの奇妙な目を見たときに、得体の知れない恐怖が全身を駆け巡ったからだ。
『…礼なら実績で返して。』
女性はそう素っ気なく返すと、アレンに目を移した。
途端に金縛りにあったかのように全く動けなくなる。
……………怖い。
母さんを殺したあいつみたいな、とんでもなく危険なオーラを女性は持っていた。
いや、それよりももっと恐ろしい。