レヴィオルストーリー2
33.消えた笑顔
「――……ぅ゙あ…ッ!!」
激しい頭痛と激しい動悸。
掠れた微かな声をあげ、アレンはやっと悪夢から目を覚ました。
息が上がって全身汗びっしょりだ。
「――……はぁっ、はぁっ…」
割れそうなくらい痛い頭。
どこらへんが痛いのかもわからない。
アレンは額に両手の手のひらを押し付け、しばらく仰向けに寝たまま息を整えた。
それから、少し落ち着いたところで上半身だけ起こす。
(……今の…夢…)
思い返すだけで身震いした。
────あれはただの夢じゃない。
あの記憶がなかったところの過去だ。
クウェン兄に記憶を消されたんだ。
都合のいいように。
まだ痛い頭を立てた膝の上にのせ、アレンはもう一度目を閉じた。
あの血だらけの場面も、『ダーチェス』という女性も、虹の精霊も。
すっかり忘れていた。
───忘れてはいけないのに。