レヴィオルストーリー2

しかしそれは泣いてどうにかなる問題ではない。


何しろ、過去の話なのだから。



ギルクはイルのオレンジ色の髪を撫でてやると、このどうしても腹に膝が入る体勢から脱出しようと身を捩らせた。


彼女を後ろから抱き締める形になる。



「…イル。泣きたいのはわかるけど泣いても何も変わんねぇぞ?」



小さな子供を諭すように、ギルクはイルを抱き締め言った。


彼を見上げたイルは涙でくしゃくしゃの顔を見せる。



「ふぇ、だって…っ、酷いっ。酷すぎるんだもん…ッ!」


そう言ってまた泣いてしまった。



「……アイツは今は幸せだろ。それでいいんだ。昔のことはどうにもできねぇよ」


「そうだけど…っ、悲しいじゃんッ!ギルクは何で泣かないのぉお!」


「えっ、逆ギレ!?そこで!?痛い痛い痛い痛いっ!!!!」



急にギルクの脚の間で体を反転させ彼の胸を叩き出すイル。


しかもグーだ。


実は怪力なイルのこれは普通はかなり堪える。



しかし普通ではなく鍛えている為頑丈でさほど痛くもないくせに、ギルクは悲鳴をあげイルから逃げた。



不機嫌な奴からは逃げるべし。


これまでの経験で編み出されたギルクの教訓だ。





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