レヴィオルストーリー2
その瞬間、アレンの脳裏にある人物が浮かんだ。
黒い長髪。
黒いフード。
黒いマント。
黒いマスク。
そして唯一赤かった、あのギラついた瞳。
────…魔王、だ。
半年前にアレンが倒した、あの黒に染まった男のことを言っている。
アレンの反応を見て彼が気付いたことがわかったのか、ダーチェスはにこりと笑むとまた紅い唇を開いた。
色っぽい声がアレンの耳に届く。
「…そう、貴方達が『魔王』って呼んでた人よ。あの人はゼウス族で私に仕える部下の一人だった…。
そして、私が唯一愛した男でもある。」
緩やかにつむがれたその言葉に何故かクウェンナが表情を曇らせた。
しかし気付かないフリをするダーチェスは腕を組むとアレンを見つめる。
「…ネオは自尊心の強い人だったわ。でも私の言うことは何でも聞いてくれた。
私は彼が好きだった。
闇王という立場から考えるとそれはいいことではなかったけれど、彼も私を好きだと言ってくれた。
…それが例え野望の為の嘘でも、私はいい。彼が私に何を望んでいたかは最初からわかっていたから。」