それでもあなたが大好きです。
それでいい。
そして陰ながら小春を見守ろう。
悪いやつが近づいていたら、こっそり守ろう。
今だけだ。
後にも先にも今だけ…
俺にも心安らげる時間を過ごさせてください。
「あ…」
アパートが近付いたとき、小春は声を上げて俺の手を振り払い走り出す。
「小春?
…っ!」
小春は俺に見られまいとしているのか、必死に張り紙を剥がしている。
その姿を見て、俺は胸が引きちぎれがれそうなくらい苦しくなった。
「…小春……」
「…見ないでください」
「大丈夫だから小春」
「これ以上みっともないところ見られたくないの!!」
振り返った小春の顔は今にも泣き出しそうで、俺は堪らなくなって小春を部屋に押し込み、力強く抱きしめた。
しんと静まり返った部屋に小春の手から紙切れが滑り落ちる音がした。
「大丈夫…大丈夫だから。
みっともなくなんかない。
お願いだから1人で抱え込もうとするなよ」
こんなにも小さい身体に、ありえないくらい重いものを背負わされている。
両親を失っただけでも十分辛いことなのに、どうして小春ばかり…
「俺が必ず救ってみせるから。
…だからあとほんの少しがんばって」
俺にしがみついてすすり泣く小春が今にも壊れてしまいそうで、小春を苦しめるこの世の中を心底恨んだ。