それでもあなたが大好きです。
外に出ると、2月と言えどまだ冬の凍えるような寒さは続いており、小春はロングコートのポケットに手を入れ、体を縮こまらせながら帰路を進んだ。
「はぁ…今日も寒い」
園田さんたちは常に私の近くで目を光らせてくれているらしいが、テレビでよく見るSPのように、私のすぐ横を取り囲むようにして歩くことはなかった。
取り囲まれるよりかはそのほうが緊張しなくていいかも…
そのとき、目の前をボールが横切った。
定番デザインのサッカーボール。
サッカーボールなんて久しぶりに見たなぁ…
すぐ側に公園があるから、あそこから転がってきたのだろうか?
…なんて呑気なことを考えていると、サッカーボールはどんどん道路の真ん中へと転がって行く。
私はハッとなって視線を上げた。
ボールのすぐ後ろ、私の斜め前には小さな男の子がヨタヨタと走っている。
周りに目もくれずボールを一身に追いかける男の子。
男の子がボールに手を伸ばそうとしたそのとき、まるで舞台の上の役者のように、男の子はヘッドライトに照らされていた。