【長完】Keeper.l
喫茶店内に流れる耳障りの良い、クラシック。

鼻腔をくすぐる、コーヒーの匂い。

『後藤さん。』

「ん?」

『今まで、ありがとうございました。』

「こちらこそ、ありがとう。」

『お金、返しますね。いつ完済出来るか分かりませんが。』

「いいよ、いいよ。僕の方も、里香ちゃんと楽しい時間過ごせたし。

だけど、僕の方は返せないでしょ?だから、貰っちゃった時間の代金なんだから、返さなくていいよ。」

『だけど、その時にしたことと言えば、



ただ、ご飯食べておしゃべりしただけですよ?』

そう。この人は、私に絶対に手をだしてこなかった。

ましてや、ホテルなんかもちゃんとしたところ泊めてくれた。「叔父と姪です。」と言い、2部屋ともお金を出してくれたのだ。

『対価、釣り合わないでしょう?』

「だけど、里香ちゃんは、僕の仕事の愚痴を聞いてくれて、相談にも乗ってくれた。

それがどれだけ僕の心の支えになったか。里香ちゃんは知らないだろう?

君は、自分が考えている以上に、周りの人に与えているよ。少なくとも、僕はそうだ。

ありがとう。」
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