【長完】Keeper.l
感情がとめどなく溢れそうだ。

『私はあんたをカモろうとしたんだよ……?初対面で永富と会った時に言ったよね、私。ただ金ぱくっただけだよって。

それなのにあんたは私が神龍にいてもいいって、ただの利益にもならないような、むしろ損にしかならないようなのを置こうとするなんて。』


そこまでいったら、十勝がムスッとしたような顔をした。


「そんなこと言うなよ。
自分のこと、損にしかならないなんて言うな。

ここに、お前に逢えてよかったって言ってる人間がいる。他の奴らは分かんねぇけど、きっとみんなそう思ってる。

お前がいてくれたから千歩の友達が出来た。きっと、千歩も女1人じゃつまらなかったと思うんだ。だけど、あんたが来てからほんとに楽しそうなんだ。

だから、自分はいらねぇみたいに言うな。」



___なんでそんなこと言うんだよ。俺はお前が必要なの。一緒にいたいんだ。一緒にいる理由なんてそれで充分なんだからさ。

【あの人】の言葉が耳奥で弾けた気がした。状況も意味も何もかも違うけど、言っているようなことは似ている。

失礼だけど、十勝はただのアホじゃなくて本当に総長なのだと感じた。


「りかちゃーん、龍くーん、はーやーくー!!」

千歩の声が聞こえる。十勝が手を振った。「取り敢えず、進もう」と声をかけながら。


『……、ありがとう』

ポツンと出たお礼は十勝に首を捻らせただけだった。

『私のこと、神龍に置いてくれて、受け入れてくれて、ありがとう。』

もう一度言えば、再び頭をわしゃわしゃと撫でられる。


「そんなのお安い御用だ。」


太陽が少し雲に隠れていたけれど、先程の風で雲が動いたのだろう。当辺りが明るくなった。その時に感じた日差しは、とても暖かいものだった。
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