【完】放課後、図書室で。

「まず藤村ダサくねえし、ブスでもねえよ。俺は藤村の事そんな風に思ったことない。」


その言葉に心臓がとくんっと跳ねる。
涙もいつの間にか止まっている。


「それにカーストとかなに?誰がそんなの決めんの?俺はそんなこと考えたことないし、下位とか上位とかそんなの関係ねえだろ。俺と藤村、同じクラスの同じ学年で。差なんてどこにもねえよ。勝手に決めて勝手に遠慮するなよ、俺の意見くらい聞いてからしろよ。」


静かに、淡々と。
茅野くんは私に怒りをぶつける。
怒っているわけじゃない、たしなめるように。
私の不安を取り除くように、間違いを正していく。


「俺は藤村ともっと話がしたい。目を合わせて話をしたい。もし藤村がカーストとか言う意味の分からないことが原因で話をしてくれないなら。その考えがなくなるまで俺は藤村と話し続ける。俺は、藤村と対等な立場で、友達になりたい。」


心の中の何かが割れる音がした。
私の中の概念が、壊れる音がする。


茅野くんが遠い存在だって。
手の届かない雲の上の人だって。
カースト上位の上位の人で。
話すことすらおこがましい存在だって。


そう決めつけていたのは、他の誰でもない私だったんだ。


周りの対応ばかり気にして、茅野くんの気持ちは無視して。
私の、自分の恋心すら邪険に扱っていた。
本当はもっと大切に扱うべきものなのに。
このピカピカの想いは、大事なものなのに。



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