【完】放課後、図書室で。
本当は最初からカースト制度なんて存在しなくて。
上も下もなくて。
釣り合わないっていちばんそう思っていたのは私だったんだ。
振られるのが怖くて。
話しかけて無視されたらって思うと怖くて。
意気地無しで勇気がない自分を守るために。
茅野くんを遠ざけていたんだ。
自分で勝手に自分を過小評価して。
それで勝手に傷ついて、勝手に泣いて。
ばかだ、私。
恋愛なんて自由なのに。
誰かが誰かを好きになる事を、止めることなんてできないのに。
自分で自分の心に蓋をして。
茅野くんを好きな自分を否定してた。
茅野くんはこんなにも私に向かって真っ直ぐ来てくれていたのに。
真っ直ぐ見つめて、待っていてくれたのに。
私が勝手に逸らして、現実逃避して。
逃げてたんだ。
「俺と友達になってよ、藤村。」
きっかけはこの笑顔だった。
あの時と変わらない、太陽のような笑顔。
くしゃっとした目元。
きらりと輝く八重歯。
夕日に照らされた髪の毛はやわらかそうで。
風に乗って香る茅野くんの匂いは石鹸の匂いがした。
洗練された空気を纏った茅野くん。
ビー玉のように輝く瞳はいつだって私の目を見ていて。
真っ直ぐ真っ直ぐ、私に向かってきてくれていた。
変わらない、誰に対しても。
私に対しても、変わらない。