【完】放課後、図書室で。
神様の謙虚な私への贈り物なのか。
それとも嫌がらせなのか。
兎にも角にも。
全女子の鋭い視線を受けながら。
私は冷や汗いっぱいの背中で黒板に自分の名前を書いた。
震えた手で書いた名前は歪で。
今の私の姿を現しているようだった。
その隣に並んだ端正な字は幻覚が見えるくらい光って見えて。
茅野の文字と並んだ私の名前はなんとも滑稽だった。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
2学期の委員会決め。
毎年のように私は図書委員に立候補した。
図書委員は、本の整理や図書当番。
お昼休みや放課後も残ってしなければいけない仕事が多くて。
誰も立候補する人はいなかった。
だから、私は第一希望の委員会を勝ち取ることができた。
女子が私だからっていう理由もあるんだろうけど。
男子枠はいつも決まらない。
他の委員会の保健委員、文化委員とともに茅野くんを含めた3人の男子がじゃんけんを繰り広げていた。
保健委員と文化委員の女子は天に乞うように両手を握りしめていた。
そして私もまた祈っていた。
どうか、茅野くんと同じ委員会にはなりませんように。
女子から恨まれるなんてたまったものじゃない。
私はささやかに想い続ける方が性に合っているんだ。
だけど思いは儚く。
あっけなく打ち壊された。
図書委員の男子枠に、茅野くんの名前が記入された。
「よろしく、藤村。」
爽やかな笑顔。
私の心は曇天。
後ろからの女子の視線が痛い。
どうして、こうなっちゃったんだろう。
中学2年の委員会。
無事に終わりますように。