Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「いい? こんな風にボールを打って……」
 プレイパークも初めてだ、という華月を連れて、俺たちはビリヤードを始めた。

「で、九番がポケットに入ったらそこで終了。小さい番号のついたボールからポケットに入れていって……華月?」
 説明しながら顔をあげると、華月はぼおっと俺を見ていた。
「どした?」

「ケイさん、かっこいいです……」
 ほんのりと頬をそめてそんなことを言う華月に、ふ、と笑う。
「見てろよ」

 少しいい気分になった俺は、玉を集めると、集中してキューを握った。

 カンッ!

 手球をはじくと、玉があちこちに散乱して、次々にポケットへと落ちていく。
 目を丸くしている華月の前であっという間にすべての玉が消えた後、テーブルの上には白い球だけが残った。

「すごい! ケイさん、すごいです!」
 興奮して拍手する華月に、悪い気はしない。そんな気持ちになるあたり、何だか俺も、ここで遊びに明け暮れていた中高校生の頃に戻ったみたいだ。

 けれど俺は、そんな気持ちはおくびにも出さずすました顔でキューを差し出す。
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