Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「よ」
「おい、ずいぶん、ごぶさただったな」
「やーん、ケイだあ」
 言いながら、紗理奈が俺に抱きついてくる。うわ、酒臭い。

「ずいぶん飲んでんな、紗理奈」
「えー? あたし、酔ってなんかないよお?」
 ふらふらとした足元の紗理奈を、俺は篤にぽんと放り出した。

「ほらよ。もう帰んのか?」
「ああ。これからは別のお楽しみ」
 男二人で、にやにやと紗理奈を見た。ああ、そういうこと。

 上目づかいになった紗理奈が、自分の唇をぺろりと舐める。
「ねえ、ケイも行こうよう。久しぶりに……ね」
「行くか? ちょうどケイも女連れだし」

 篤たちは、華月の身体を舐めるように見ている。華月はきょとんとした顔をしていたけれど、自分に話がふられたのに気づいて頭をさげた。

「こんばんは。ケイさんにはお世話になってます」
 前かがみになった華月の胸元に、男たちは目が釘付けになった。……あ、俺も、つい。

「いえいえ、俺たちもケイさんにはお世話になってます」
 和也が、彼女をまねて大仰にお辞儀を返した。
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