Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「遠慮しとくよ」
「えー、つまんなあい」
「行くぞ、紗理奈。俺らで十分だろ」
「じゃ、な、ケイ」
 二人でふらつく紗理奈を支えて、やつらは帰っていった。華月が、ことりと首をかしげる。

「よろしかったのですか?」
「何が?」
「お友達ですよね。お誘いされていたようですが、行かなくてよろしかったのですか?」
 これからあの三人でナニをするか、華月が知ったら卒倒するかもしれないな。

「あいつらはこれから飲みなおすってさ。俺は、華月と二人きりの方がいいけどな」
 耳元で言ったら、華月が嬉しそうに頬を染めた。おお、新鮮な反応だ。

 あいつらと遊ぶのも、嫌いじゃなかった。

 けれど、いつの頃からか、後に何も残らないその薄っぺらい関係と時間を、どうしようもなく虚しく思うようになって、一度そう思ってしまったら、もうこの街には足が向かなかった。
 そういえば、そう思い始めたのはあいつに会った頃だったな。そうか。あいつらに会うのも10年ぶりくらいか。

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