Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「ああ、そっか。だから、強行軍だぞって言ったろ」
『だってよー、一年後の新婚旅行なんて味気ねーじゃん』
「仕事が多いのはいいことだろう、売れっ子メイクさん」
『そーだけどー、ああ自分の腕前が恨めしいわー』
 ひとしきり笑った後で、レンが真面目な声で言った。

『ケイ、ありがとな』
「なんだよ、急に」
『昨日話そうと思ったんだけど、お前と話す時間があまりとれなかったから』
 まあ、結婚式の当事者なんてそんなもんだろう。

『その……いろいろと、世話になったから。俺も、美希も』
「美希はともかく、お前の世話をした覚えはないぞ」
『俺は、ずっとお前に支えられてきたよ。お前がいなかったら、今の俺はなかっただろうし……だから、これからも、親友として……』
 言ってる本人もこそばゆいのか、だんだん声が細くなる。
 こんな話、聞いてるこっちもこそばゆいぞ。
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