Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
 家同士の付き合いがあって、幼いころから友人だった。結構馬が合って、一緒にバカをやってきた。ずっとそうやって俺たちは続いていくものだと思っていた。

 そのレンが、高校3年の頃……あいつに会ってから、変わった。いきなりメイクアップアーティストになりたいと言い出した時は、かなり驚いたのを覚えている。てっきり、親に決められた道を進むものだと思っていたのに。俺のように。

 自分だけの道と大切な人を見つけたレンを、羨んだこともあった。そんなことをあてこすったら、レンに言われた。

『お前だってあるだろ、大事な未来が。すねていたら、時間がもったいないぜ』
 まさか気づかれているとは思わなかった。けれど、その一言で心が軽くなったのも事実だ。
 あいつがいたから、今の俺がある。……同じことを、レンも思っていてくれたのか。

「俺にとっても、お前は大切な人間だよ。これからもよろしくな、親友」
『……おう』
 どっちも照れて、それ以上言葉が続かない。

「えーと、それより、美希は? そこにいんの?」
 笑ったりするやつじゃないのは知ってるけど、こんな話聞かせられない。
『今シャワー行ってる』
 なるほど。レンだってこんな話、聞かれたくないわけだ。
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