Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
『もう出てくるだろうけど……あのさ、ケイ……』
 何かを言いかけて、レンが口ごもる。その様子で、レンが何を言いたいかわかってしまった。

 多分、レンも、気付いているんだ。でも。

「幸せになれよ」
 レンの言葉を全部聞かずに、俺は軽く笑いながら、心からそう言えた。昨日までの喪失感は、すっかり俺の中から消え去っている。

 ああ、そうだよ。完敗だ。
 本当は夕べからわかっていたくせに、高校生に満たされてしまったなんて、認めたくなかった。

『……うん』 
「俺も、今日は正念場なんだ」
『あー。そうだったな。無理、すんなよ』
「さんきゅ。帰ってきたら連絡くれよ。また、会おう。……レン」
『ん?』
 これが最後。もう、あいつを心配するのは、レンの役目だから。

「美希の事、大事にしろよ」
『……もちろんだ』

 さて、と。
俺も、行くか。
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