Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をｰｰｰ

「ああ、失礼。名乗ってなかったね。俺はケイ。友達はみんなそう呼ぶから、華月ちゃんもそう呼んで」
「はい。ええと、ケイさんは、ご結婚されているんですか？」
「いや。嫁さんどころか、つき合ってる彼女すらいない寂しい男だよ」
　今は、ね。
「そうなんですか。よかった……あ、なんて言ったら失礼ですね。ごめんなさい」
「俺が妻帯者だったら、また別の男を探す？」
　少し意地悪な声で言ったら、華月ちゃんは困ったように微笑んでグラスに視線を落とした。

「私の学友で、恋人がいらっしゃる方がいます。彼女の話では、その方とデートをするととても幸せなのだそうです。そのお話を聞いているうちに、私もデートというものがしてみたくなって……でも私にはそのように誘ってくださる方はいらっしゃいませんから、とにかく男の方とお話をしてみようと思ったのです」
　それで逆ナンしてたのか。あぶなっかしいな。世間知らずもいいところだ。