Invanity Ring --- 今宵、君にかりそめの指輪をーーー
「華月ちゃんだっているじゃん、お見合いの相手が。そいつに誘ってもらえば?」
 俺の言葉に、なぜか華月ちゃんはうつむいてしまう。
「でも、まだお会いしたこともございませんし……」
「会ったことないの?」
「はい。お父様のお知り合いからのご紹介なのです」
 グラスをみつめたまま、華月ちゃんが呟いた。

「私……その方を、愛せるでしょうか」
 ぶ、と思わずむせてしまった。

「ケイさん?!」
 あわてて、華月ちゃんがバックから白いハンカチを出してくれる。それをありがたく借りながら、なんとか呼吸を整えた。
 あ、愛せるかって……ストレートにとんでもないことを聞かれたな。

「悪い、ちょっと驚いただけ。……不安なの?」
 そいつより、知らない男の方がましと思うほどに。
「正直言うと、少し。相手の方は私より十近くも年上の大人で……」
 とつとつと話すその姿は、困惑しているには間違いないけれど、後悔している様子ではない。

 結婚自体が嫌ではないという言葉は、本当らしい。ちゃんと受け止めているあたり、ちょっと世間からはズレているけれど、芯はしっかりした子なのかもしれない。
 
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