最後の男(ひと)
「一香からの呼び出しってことは、ついに気持ちが固まったか?」

休暇に入っていた町屋先輩に連絡をしたら、いつものように素敵なお店を予約してくれていた。

「ごめんなさい、気持ちはまだ固まってないんです。でも、想像してみたら、先輩とキスもエッチもできました。こないだ私が転びそうになった時に支えてくれたのも嫌じゃなかったし、先輩のスーツの匂いもちょっと触れた指の感触もいいなって思いました」

「何気に変態だな、おまえ。まぁ、エロい女は好きだけど」

先輩は苦笑しながらも、それで?と、先を促す。

「私、先輩から今回のお話を貰って、まだ自分の中で昇華しきれてない過去に気付いたんです。そこから踏み出さないことには、先輩と向き合う資格はないと思いました。

先輩とお試しエッチしてうっかり相性良かったら流されてしまうから、今回のお話は一旦辞退させてください。もし先輩が正式に帰国した時に、先輩もまだフリーでその時にも私のことをいいって思ってもらえるなら、改めて口説いてください。逆に、先輩の帰国まで待てなくて私の方から追いかけるかもしれないですけど」

それは、正直な今の気持ちだ。今すぐGOサインは出せないけれど、先輩との将来に可能性を感じている。

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