最後の男(ひと)
お風呂上がりに、汚れた洗濯物を洗濯機に放り込んでセットする。翌朝には、きれいになった衣類たちがふんわり仕上がっている。

基礎化粧品でお肌の手入れをしていると、士郎から「あと30秒で着く」とメッセージが届いた。つまり、もうマンション内には入っているという事になる。鍵を開けて、玄関先に仁王立ちにして待つ。すぐに玄関扉が開いた。

「まだ今日木曜日なんだけど。あと1日待てなかったの?」

腕組みする私を気にも留めないで、士郎は、「はい」と言って買い物袋を渡してくる。いつもの差し入れだ。

「一香の話も聞いてやりたいけど、ごめん、今すぐ挿れさせて」

廊下でふらりと私に抱き着いてきた士郎は、早急な手つきで私の服を乱していく。

「今すぐって言ったって、女は準備しないと濡れないんだから」

「だから、一香のいいところは分かっている」

その言葉のままに、無駄のない動きでピンポイントに攻められて、自分でもあっという間にそこが潤ったのが分かった。

「ちゃんとベッドに」

私の言葉は遮られ、士郎の昂ぶりが一息に貫く。背後から容赦なく責められて、廊下の壁に支えを求める。

「スーツ汚れちゃう、からぁっ。ね、逃げないから、ちゃんと服脱いで……っ」

嬌声交じりに言っても、士郎の腰は止まらない。もしかしたら、大分お酒を飲んでいるのかもしれない。士郎は余程飲まない限り顔にも出ないしアルコールの匂いもしないから、自己申告をしてもらわないと分からない。

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