【完】キス・フレンド

「しない?」


耳元で甘く囁かれた声に身体が疼く。
こんな感覚は初めてでクラクラする。
腰に力が入らない。
全身の力が抜けていくのを感じる。


興味と好奇心。
そして空気に流されて。
この甘い世界の虜になりつつある私は。
首を縦に振った。


先輩はくすりと笑った後。
私の耳元に唇を吸い寄せ、軽くリップ音を鳴らした。
そのくすぐったさに片目を閉じていると。
頬にゆっくり、手を添えられた。


また視線が絡まり合う。
熱を帯びた、潤んだ瞳。
鼻と鼻が触れ合い、先輩の吐息が顔にかかる。
目を閉じる先輩につられて目を閉じ。
ゆっくりと重なる唇の感触に、全神経を集中させた。


ファーストキスはレモンの味なんて。
誰が言ったのだろう。


初めてのキスは、甘い甘い。
むせかえりそうになるほど甘いミルクチョコレートの味がした。


触れるだけのキス。
触れては離れ、目を合わせ、そしてまた目を閉じて、唇を重ねる。


先輩との奇妙な関係は形を変えていく。
セフレでも、ソフレでもない。
キスフレンド。
曖昧な関係が、綻び始める。


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