【完】キス・フレンド
「暑くったって飴くらいなめますよ。オレンジソーダ味だからしゅわしゅわして美味しいんです。」
「余計喉乾くだろ。意味分かんねえ。」
「分からなくったって結構です。」
カランコロン、音を立てて舐める。
ガムは好きじゃないけど飴は好きだ。
あまり噛むのが好きじゃないから、最後まで舐める派。
丁寧に丁寧に、形を崩さないように舐める。
下に触れる度にピリリ炭酸が染みる。
少し痛くて、でも後からオレンジの仄かな甘みがやってくる。
その刺激が病みつきになる。
音を立てて舐めていたからか、先輩がちらちらこっちを見てきた。
「なんですか。」
「いや、まだ飴残ってる?」
「残念でした、1個しかありません。」
「お前……そこは俺の分も用意しておく所だろ。」
「バカにした先輩にあげる飴はありません。」
本当は持ってきてるけど。
ポケットに手を突っ込んで飴の袋を撫でる。
カサリ、小さな音を立てた。
あるけど、あげない。
なんとなく、あげたくない。
「その生意気さ、どうにかしろよ。」