【完】キス・フレンド
ファイナル・キス
秋が深まる頃。
カーディガンなしじゃあ寒くて外に出られなくなった季節。
私はまたいつものように裏庭に来ていた。
体育座りをして、膝に顔をうずめた。


今日は先輩、来るのだろうか。


夏休みが明けてから、3年生は本格的に受験に本腰を入れ始めて。
先輩もだんだんと来る回数が減ってきていた。


最初からそのつもりだったんだろうし。
予想はしていたけど。
1週間に1回来たらいい方で。
もう、何週間も先輩と顔を合わせていなかった。


気付いたことがある。
私と先輩は、この場所以外じゃあ何の接点もないことに。


校内ですれ違うことだってない。
私は先輩の噂を耳にするけど。
先輩が私の事を耳にすることはない。


ここで出会わなければ私たちは。
ずっと赤の他人だったんだ。


その事実に少し胸が痛くなる。


私が動かないと、先輩には会えないのか。
先輩ってやっぱり遠い存在だったんだなあ。


先輩がいないこの場所は異様に広く感じて。
居たら狭くて言い合いになっていたのに。
今じゃあいないと変な感じがする。



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