【完】キス・フレンド

「広瀬との時間、嫌いじゃなかった。」


「せんぱっ……。」


私の声を遮るように、先輩は私の後ろの首筋にキスをした。
強く、強く吸いつくキス。
痕をつける様に、長く、強く、先輩はキスをした。


首筋に感じるぬくもりと、快感。
鼻から息が抜けていく。
ふにゃり、身体の力が抜けて。
先輩の手が、私の目からはなされる。


真っ暗だった世界から一変、光の洪水が視界を襲う。
目が慣れるまでに数秒。
見えるようになってから振り向いたけど。
もう、先輩の姿はなかった。


……先輩。
あんまりです、こんなの。
こんな終わりかた、ひどいです。


私、先輩の顔見れなかった。
これで終わりって。
私の、私の気持ちはどうなるんですか?


気付けば目から涙が流れていた。
冷たい秋風が私の身体を蝕む。
目に感じていたぬくもりも奪われ。
先輩の残り香も、もうどこからもしない。


秋、先輩との時間は唐突に終わりを告げた。
そして私は先輩と今後会うことはなかった。


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