【完】キス・フレンド
「なんですか?」


「お前もここ使えよ。」


「は?」


「俺来年から受験生だから頻繁には来ないだろうし。それに、他に居場所なんてないだろ?」


……確かに。
ここが最後の頼みの綱だったし。
他の場所だったらきっとまたすぐ先生に見つかっていただろう。


この場所は知らない人から見たらただの物置で。
よく見ないと人がいるなんて気付かない。
だいたい、裏庭なんて誰も来ないし。
サボるには絶好の場所だった。


他のサボり魔にとられるのも癪だし。
あと半年くらい経てば先輩はいなくなってこの場所をひとり占め。
……美味しい話かも。


「ノリます。」


「決まりだな。」


先輩は私の腕を掴んでいた手を離し。
私はまたもとの位置へと腰を下ろした。


こうして見ると、先輩との距離近いなあ。
30cmくらいしかないんじゃないかな。
足は伸ばせないし、体育座りでいなきゃいけないし。
正直ここにふたりで居るのは辛いんだけど。
でもまあ、この空間嫌いってわけじゃないし。


「お前名前は?」




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