7年目の本気

「まだオレを好きにならないのか? 
 早く惚れろ」

「押し付けがましいのは嫌いなの」


(好きな人間はあまりいないと思うが)


「ここに来る途中の脇道ででもすれば良かったな、
 絶対オレに惚れたはずだ」

「なにを?」

「セッ*ス、お前を満足させる腕前(テク)は
 持っているつもりだ」


 私は飲んでたウーロン茶を噴出した!
 突然何を言い出すんだ! この親父は!


「あーぁ あーぁ」


 宇佐見さんは笑いながら、
 呆然とする私の顔をおしぼりで拭いた。


「冗談だよ。でも、ウーロン茶を噴出す和巴も、
 今の呆然としている和巴も全て可愛いよ」


 ほ……
 本能が告げている………私の操が危ない!


 上ヒレ・上カルビ・とうがらし(赤身の希少部位)
 ミスジ・シャトーブリアン等など ――、
 一見(いちげん)客じゃまず食べられないような
 メニューの数々をたらふく食べ。
  
 この店オリジナルのスペシャル冷麺と
 スウィーツ盛り合わせで締めた。
  
 う~ん、満腹 満腹……。
  
  
  
「―― ご満足頂けましたかな?」

「えぇ、もちろん。すっごく美味かったです」

「それはよかった」


 宇佐見さんは店員さんを呼んだ。


「ご馳走様、美味しかったよ。会計はこれで」


 店員に手渡すカードに私は目が釘付けに!

 ……ブラックカード?

 しかも、アメックスのやつ。

 ……いい年して親の脛かじり、って奴?

 私の中で『危険人物』メーターがぐぐ、
 ぐーんと上がった。



「どうした?」

「へ? ―― あ、ご馳走様でした」


 一応、私は頭を下げた。一応ね。


「いいえ、お粗末さまでした。約束通り
 お宅まで送るよ、近くの駐車場に ――」


 送り狼警報発令中!!
  

「い、いえ。ご心配には及びません。
 まだ、電車あるし歩いても帰れます」


(いや、さすがに新京極から嵐山まで徒歩は
 キツイだろ)
 
 宇佐見さんは言葉を遮って断る私を訝しげに見た。
  
  
「いや、送るよ。早く帰らなきゃいけないんだろ?
 高速使えば……」

「電車で大丈夫。今日はありがとうございました」


 頭を下げて、宇佐見さんが何か言おうと
 しているのを聞かずに店を出て、
 足早に駅へと向かう。

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