7年目の本気
送り狼警報
マジ、あの男何者??
アメックスブラックカード持ってた。
カメラマンってそんなに儲かるの?
という事は、今日乗ってたベンツもあいつの車?
私の家まで送ると言った……まさか、
送り狼って事はないだろうけど、
あの年でブラックカード?
怪しすぎる!
あぁいうのには関わらない方がいい!!
”君子、危うきに近寄らず”
けど……大学はもちろん、
嵐山に住んどるって事もバレている……
やばいなぁ……本意ではないけど、何か護身具でも
身に着けようか?
とにかく早く駅に着こう!
早く構内に入らないと、何か嫌な予感がする……。
私は駆け足で駅に向かった。
角を曲がると、駅が見えた!
あぁ、後もう少しだ!あと ――
突然、私の行く手を阻むように黒い車が歩道に
乗り上げた!
メタリックブラックのベンツ? まさか……
あ ―― やっぱりあいつ!
こんな事なら無理にでもお酒飲ませておけば
良かった……。
あ、降りてきた! 追いかけてきたの??
何か無表情。
食事代でも請求に来たのかな?
なら、なけなしのへそくりで払うしかない!
少し後退さった私の前に宇佐見さんが立ち、
溜息をついて笑った。
「オレはよほどキミに警戒されているみたいだな」
「はい」
宇佐見さんは突然私の腕を掴んで歩き出した!
「ちょっと! いきなり何よ?! 放してっ!」
必死で抵抗するけど、力じゃ男に敵わない!!
「おとなしく乗れ」
強い口調で言いながら運転席側の後部座席のドアを
開けて無理矢理、私を押し込んだ!
やばい! 若狭湾に連れて行かれる!!!
勢い良く押し込まれたせいで後部座席に
投げ出された様な形になったが、すぐに体制を
整えてドアノブに手をかけた。
―― が、いち早く運転席に座った宇佐見さんが
ドアロックをかけた。
「送ると言っただろ? 大人の言うことはちゃんと
聞くもんだよ? 学生さん?」
笑いながら私を見た。
「……」
仕方なく、無言で座席にもたれかかると、
それを確認して宇佐見さんが車を発進させた。
「東山大路、だったよね?」
「……はい」
「若狭湾には連れて行かないから安心して?」
「え?」
私は宇佐見さんを見た。
「『私をどうするつもりだ』と顔に書いてある」
「……」
その笑った顔が、妙にムカつく。
「オレは、人の出会いは一期一会だと考えてる。
夕方キミに会ったのも、キミとオレの出身が同じ
だったのも全て偶然ではない。キミに焼肉を奢った
のもね」
「はぁ……」
「たとえ偶然だったにしても、そんな出会いこそ
大切にしていかなきゃ勿体無いだろ?」
また笑いながら、
宇佐見さんはタバコに火をつけた。
車は高速に入り、私は久しぶりに見た高速からの
夜景を眺めていた。
胃が消化を始めて、車の心地良い振動と暖かさで
瞼が重くなってゆく……
でも! ここで寝てしまったら、
どこに連れて行かれるか分からない ―― って、
思うのに……
明日も早いなぁ……あ、利沙に**のレポート
返しておかなきゃ……
睡魔に負けて、私は目を瞑った。