7年目の本気

 ―― あ、れ?


 目が覚めて運転席を見ると宇佐見さんがいない。

 しかも! ココって若狭湾??
 天の橋立じゃない?!


 一瞬本当に拐われたと思ったが、宇佐見さんは
 外でタバコを吸っていただけ。


 車のドアの開閉音で、宇佐見さんは振り向いて
 私に微笑んだ。
  
  
「よく眠れたか?」

「はぁ……」

「いつもは何時に起きるんだ?」

「ん~ ―― 始発の時間には大体起きとるけど」
 
「早いな、オレの寝る時間だ……」

「あの、おっ ――」


 危うく”おっさん”と、言いそうになって、
 慌てて口をつぐんだ。
  
  
「―― そろそろ行こうか」  

「はい」


 宇佐見さんが助手席のドアを開けてくれたので
 素直に助手席に座ると、
 後部座席に置いていた私の荷物を笑いながら
 取ってくれた。


「ありがとうございます……」

「そうやっていつも素直だと、めっちゃ可愛いよキミ」

「私は何時だって素直で可愛いです」

「アハハハ ―― こりゃ、負けた」


 宇佐見さんは笑いながら車を発進させた。



 渡月橋を越えた辺りからカーナビに代わって
 道案内。

 実家の前まで送ってもらい、宇佐見さんに
 きちんと礼を言った。


「ありがとうございました、お肉と送迎」

「いいえ~、仕事頑張って」

「はい、宇佐見さんも」


 私は少し笑った。

 そして、車から降りて裏の勝手口から家に入る。

 私が身構えていた以上に彼は悪い奴でも
 なさそうだ。
  
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