7年目の本気
為せば成る 為さねば成らぬ 何事も
成らぬは人の 為さぬなりけり
By 米沢藩主 上杉鷹山
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あの同窓会から数日後 ――
”今日、東京に戻るから”と
世良がわざわざ店まで挨拶にきた。
(どうしてわざわざ? って、思わないでもなかったが)
『時間作ってわざわざ来てくれたんだから、
そいら辺のカフェでも行ってゆっくり話して
らっしゃい』
って、千早姉の厚意に甘え、世良と一緒に外へ出た。
世良は客室に入るなり、唇を押し付けてきて、
奥まで舌を入れるようなエロいキスをしてきた。
「ん……はぁ ――」
息をするのも大変だ。
世良の手が、ニットの上のふくらみへと伸びる。
―― キャー! 遂にこの時が!
むにっ。
世良がものすごく驚いた顔をしていた。
和巴も、すごく驚かれるだろうと予想していた。
恥ずかしくて頭こうべを垂れる。
「え? ノーブラ?」
そう。上下白ってのもいかにもで恥ずかしいし、
敢えていつも着慣れている小母さんパンツにしても
合わせるブラないし ―― と、
悩みまくった挙句の結論がコレです。
こじらせててすみません。
和巴がまた黙り込むと、世良は、耳を噛みながら、
ニットの下から手を入れる。
「ん、ふぁ……」
その手が、服越しではなく、直に和巴の胸を掴む。
その冷たい手が乳首を掠めて、びくっと腰が跳ね、
和巴は両手で彼の袖を掴んでしまう。
「エロいな」
彼は獲物を前に舌舐めずりした。
―― いやいや、エロいのはあなたでしょー!
そう思いつつ、声を絞り出した。
「バラバラだって笑われて、
統一してくるのも恥ずかしいじゃない」
世良は意外そうな顔をしてから微笑んだ。
「俺そういうの、大好き」
「……」
「―― 3度目の正直だ……今夜は逃さないぞ、
和巴。今夜こそキミの化けの皮を剥がす時だ。
そのとぼけた仕草で俺を惑わし続けた
キミの本性が、娼婦なのか聖女なのか?
じっくり……じっくりとね」
欲と情に流された2人を止める障害は
何もなかった。
「……は、恥ずかし……」
「いいから素顔を見せるんだ。どんなに乱れたところで
……俺達はもう、恋人同士なんだから」
「恋人?」
「そう、恋人……何ならこのまま妻だってアリだ。
あんな先のない会社なんか辞めて、いっそ俺に嫁ぐ
というのはどうかな? どうせ和巴が内定を承諾した
会社、嵯峨野書房は保ってあと半年程度だろうし」
「はぁっ?? 半年程度ですって?」
「社員のキミには酷な話だけどね。先のリーマン・
ショックで関連会社が幾つか倒産して、嵯峨野書房も
かなりの打撃を受けてるハズなんだ。それに今回の
株譲渡問題……そりゃ結城社長も必死なんだろうけど
必死なあまり回りが見えなくなる、という事もある」
「……」