7年目の本気
「俺が見たところじゃ恐らく、銀行の貸付けも
利息ばかりが膨らんで雪だるまみたいになってる
んじゃないかなぁ。はっきり言って内情は火の車。
なのにうちとの合併話まで撥ね付けるんだから。
もう、嵯峨野書房に生き残る道はないも同然」
「が、合併っ?? 何処と何処が?」
「だからぁ、うちの会社・世良不動産と嵯峨野書房さ。
ま、名目上は合併だけど、事実上は”吸収合併”――
いや、買収だったけどね」
世良は軽い口調で言ったが、買収される側の
就職内定者としては捨て置けない話題だ。
世良が行為続行しようとする手を和巴は静止しつつ
世良へ質問をぶつける。
「でも、業種からしてうちとあなたの会社じゃ、
100%畑違いじゃない」
「うちとしては会社の業務内容なんかあんまし
関係ないんだ」
「??」
世良の手が和巴のニットをたくし上げた。
和巴はそれを元に戻し、同時に半身を起こす。
世良が仏頂面で呟く。
「話しは後でじゃだめ?」
ここまで話しておいて、今さら何だ?!
「私は今、聞きたいの」
「……うちが欲しいのは嵯峨野書房の駐車場がある
土地なんだ」
「!!……」
「実はあそこの隣にある**ビルと後ろに位置する
**ビルの買い取りには成功していてね、あとは
お宅が立ち退いてくれさえすれば、一気にぶっ壊して
新しい商業施設を作る事が出来る」
「……」
「ところが結城社長他、幹部の方々は意外に
しぶとくてね」
「?……」
「しかも土地の売買交渉へ入る前に、うちの叔父貴が
専務の安倍さんを激怒させてしまって。取り付く島も
ないって感じで、すっかり参っちゃってさ」
「あの、専務さんを怒らせた……?」
「最初の席で嵯峨野の専務さんに
”そうまでしてうちの作品を横取りする気なのか”
って言われて、売り言葉に買い言葉で叔父貴が
”わざわざ会社を乗っ取ってまで奪いたいと思う
ような本はお宅にありません”って、言っちゃった
らしいんだぁ……」
それは ―― 激怒されて当然だ。
出版に携わる人間なら素人目には駄作でも、
作家さんが心血を注いで書き上げた作品は
欠け替(が)えのない宝物だから。
和巴は衣服の乱れを整えながら、
ベッドから立ち上がった。
「和巴?」
「今後、世良不動産と嵯峨野書房である諸々の
トラブル関係で顔を合わせる事はあっても、
個人的にはこれでサヨナラね」
そう言われ初めて世良は自分の失言に気付いて。
取り乱し和巴にとり縋る。
「待ってくれ和巴」
「離して、世良くん」
「この年になって、こんなにも欲しいと思ったのは
キミだけだ。和巴」
「いくら下っ端だって、私にだってねー愛社精神って
もんがあるのっ! あそこまで自分の会社をコケに
されちゃ黙っていられないわ」
「でも俺が言った嵯峨野の経営状態は本当の事だ」
『離して!』『嫌だ』 ――の、押し問答と
揉み合いは続き。
さっき整えたハズの衣服もあっという間に
乱れてしまう。
「お願いだから待ってくれ和巴っ!!」
「もーうっ ―― しつこいっ!!」
目にも止まらぬ早業で繰り出された一本背負いが
綺麗に決まり、世良は投げつけられ白目を剥いた。
利息ばかりが膨らんで雪だるまみたいになってる
んじゃないかなぁ。はっきり言って内情は火の車。
なのにうちとの合併話まで撥ね付けるんだから。
もう、嵯峨野書房に生き残る道はないも同然」
「が、合併っ?? 何処と何処が?」
「だからぁ、うちの会社・世良不動産と嵯峨野書房さ。
ま、名目上は合併だけど、事実上は”吸収合併”――
いや、買収だったけどね」
世良は軽い口調で言ったが、買収される側の
就職内定者としては捨て置けない話題だ。
世良が行為続行しようとする手を和巴は静止しつつ
世良へ質問をぶつける。
「でも、業種からしてうちとあなたの会社じゃ、
100%畑違いじゃない」
「うちとしては会社の業務内容なんかあんまし
関係ないんだ」
「??」
世良の手が和巴のニットをたくし上げた。
和巴はそれを元に戻し、同時に半身を起こす。
世良が仏頂面で呟く。
「話しは後でじゃだめ?」
ここまで話しておいて、今さら何だ?!
「私は今、聞きたいの」
「……うちが欲しいのは嵯峨野書房の駐車場がある
土地なんだ」
「!!……」
「実はあそこの隣にある**ビルと後ろに位置する
**ビルの買い取りには成功していてね、あとは
お宅が立ち退いてくれさえすれば、一気にぶっ壊して
新しい商業施設を作る事が出来る」
「……」
「ところが結城社長他、幹部の方々は意外に
しぶとくてね」
「?……」
「しかも土地の売買交渉へ入る前に、うちの叔父貴が
専務の安倍さんを激怒させてしまって。取り付く島も
ないって感じで、すっかり参っちゃってさ」
「あの、専務さんを怒らせた……?」
「最初の席で嵯峨野の専務さんに
”そうまでしてうちの作品を横取りする気なのか”
って言われて、売り言葉に買い言葉で叔父貴が
”わざわざ会社を乗っ取ってまで奪いたいと思う
ような本はお宅にありません”って、言っちゃった
らしいんだぁ……」
それは ―― 激怒されて当然だ。
出版に携わる人間なら素人目には駄作でも、
作家さんが心血を注いで書き上げた作品は
欠け替(が)えのない宝物だから。
和巴は衣服の乱れを整えながら、
ベッドから立ち上がった。
「和巴?」
「今後、世良不動産と嵯峨野書房である諸々の
トラブル関係で顔を合わせる事はあっても、
個人的にはこれでサヨナラね」
そう言われ初めて世良は自分の失言に気付いて。
取り乱し和巴にとり縋る。
「待ってくれ和巴」
「離して、世良くん」
「この年になって、こんなにも欲しいと思ったのは
キミだけだ。和巴」
「いくら下っ端だって、私にだってねー愛社精神って
もんがあるのっ! あそこまで自分の会社をコケに
されちゃ黙っていられないわ」
「でも俺が言った嵯峨野の経営状態は本当の事だ」
『離して!』『嫌だ』 ――の、押し問答と
揉み合いは続き。
さっき整えたハズの衣服もあっという間に
乱れてしまう。
「お願いだから待ってくれ和巴っ!!」
「もーうっ ―― しつこいっ!!」
目にも止まらぬ早業で繰り出された一本背負いが
綺麗に決まり、世良は投げつけられ白目を剥いた。