7年目の本気
通話を切った和巴は、どっと疲れを覚えその場に
しゃがみ込んだ。
知らず知らず、大きなため息が漏れる。
考えなくてはならない事が重過ぎて、いっそ全て
投げ出してしまいたいような気持ちに駆られる。
晴彦と過ごした7年間の出来事が走馬灯のように
脳裏を過ぎっていく ――。
文化祭での出逢い。
初めての2人っきりデートは、夢にまで見た、
ディズニーランドのカウントダウンパーティー。
女の子の初めてを彼に捧げたのもその夜だった。
それから1年経ち、2年経ち ――、
晴彦の浮気が露見する度ケンカはするけど、
何日か過ぎるとヨリは戻って。
その度に晴彦から離れられなくなっていた。
―― そんな昔の事を思い出し、
くそ忌々しい晴彦の声も思い出したら、
何だか無性に涙が込み上げてきた……。
何なのよ、情けないっ!
でも、一旦盛り上がってしまった感情は、
自分でどうにか出来るもんでもない。
立ち上がって。
人気がない場所を探して、近くの路地へ入った。
建物の壁にもたれたまま崩れるようしゃがみ
込んだ。
さっきまで無理に抑えていた涙が溢れ出て来る。
やだ、もうっ! 何なの……?!
*** *** ***
―― 時間はほんの少し遡る。
同じ頃、道路を挟んだ反対側の歩道を宇佐見は
とぼとぼ歩いていた。
偶然街で鉢合わせ、勇気を出して和巴を焼き肉
デートに誘ったあの日から、もう既に*週間が
過ぎた。
その間はムカつくくらい仕事が忙しく、
デートはおろか電話をかけるヒマもなくて。
イライラは日ごとに増えて。
考える事、といったら和巴の事ばかり……。
頭の中は ”和巴” でいっぱい。
彼女一色に染まっている。
歩道橋の階段を力なく登り始め、その中ほどで
何の気なしに反対側の歩道を見た。
そして、ある1箇所で目が止まり。
次の瞬間、目の前の階段を猛スピードで
駆け上がり……。
*** *** ***
ばっかみたい……
今さら泣いたってしょうがないのに。
過ぎてしまった時間(とき)は、どう足掻いたって
取り戻せない。
自ら取り逃がしてしまった、大切な人も、
また同じ……。
自分の不甲斐なさを責めるよう、
私は口へ拳を押し付け声を殺して泣いた。
次から次に溢れ出る涙の量は
決められていないんだろうか?
笑えるくらい溢れ出て来る……。
少し落ち着いた私の横に、何時からいたのか?
宇佐見さんが立っていた。
「うさ ―― いつ、から……?」
「―― 落ち着いたか? お前、目ぇ真っ赤」
宇佐見さんは、自分を見上げてる私を見て笑う。
私は手早く涙を拭い、性懲りもなく強がりを言う。
「ちょっと、悪酔いしただけだから……」
宇佐見さんは私の傍らに座った。
何も語らず、真っ暗な空を見ている。
何故泣いていたのか?
理由も聞かずに、ただ黙って傍にいてくれる。
私も何も話さなかった。
このまま何も話さずにいようかとも思ったけど、
こんな姿を見られてしまい、話さない訳には
いかない。
宇佐見さんにどう思われるか不安だったけど、
私はポツリ、ポツリと、晴彦との馴れ初めから
破局に至ったまでの経緯を全部話した。
「―― ふ~ん、若いながらもけっこうハードな生活
送ってたんだな」
「ハード、ねぇ……」
「けどよ……」
「んー?」
「普通ならずっとオフレコにしとくような話し、
オレみたいなおっさんにしてもよかったのか?」
「ん~……何となく、宇佐見さんには私の全部、
知ってて欲しかったかなぁ~って」
「そっか……そーいやお前ハラ減ってね?」
「ハラ?」
「関東煮食いに行こうぜ。オレめっちゃ上手い屋台
知ってるんだ」
「……うん、付き合う」
しゃがみ込んだ。
知らず知らず、大きなため息が漏れる。
考えなくてはならない事が重過ぎて、いっそ全て
投げ出してしまいたいような気持ちに駆られる。
晴彦と過ごした7年間の出来事が走馬灯のように
脳裏を過ぎっていく ――。
文化祭での出逢い。
初めての2人っきりデートは、夢にまで見た、
ディズニーランドのカウントダウンパーティー。
女の子の初めてを彼に捧げたのもその夜だった。
それから1年経ち、2年経ち ――、
晴彦の浮気が露見する度ケンカはするけど、
何日か過ぎるとヨリは戻って。
その度に晴彦から離れられなくなっていた。
―― そんな昔の事を思い出し、
くそ忌々しい晴彦の声も思い出したら、
何だか無性に涙が込み上げてきた……。
何なのよ、情けないっ!
でも、一旦盛り上がってしまった感情は、
自分でどうにか出来るもんでもない。
立ち上がって。
人気がない場所を探して、近くの路地へ入った。
建物の壁にもたれたまま崩れるようしゃがみ
込んだ。
さっきまで無理に抑えていた涙が溢れ出て来る。
やだ、もうっ! 何なの……?!
*** *** ***
―― 時間はほんの少し遡る。
同じ頃、道路を挟んだ反対側の歩道を宇佐見は
とぼとぼ歩いていた。
偶然街で鉢合わせ、勇気を出して和巴を焼き肉
デートに誘ったあの日から、もう既に*週間が
過ぎた。
その間はムカつくくらい仕事が忙しく、
デートはおろか電話をかけるヒマもなくて。
イライラは日ごとに増えて。
考える事、といったら和巴の事ばかり……。
頭の中は ”和巴” でいっぱい。
彼女一色に染まっている。
歩道橋の階段を力なく登り始め、その中ほどで
何の気なしに反対側の歩道を見た。
そして、ある1箇所で目が止まり。
次の瞬間、目の前の階段を猛スピードで
駆け上がり……。
*** *** ***
ばっかみたい……
今さら泣いたってしょうがないのに。
過ぎてしまった時間(とき)は、どう足掻いたって
取り戻せない。
自ら取り逃がしてしまった、大切な人も、
また同じ……。
自分の不甲斐なさを責めるよう、
私は口へ拳を押し付け声を殺して泣いた。
次から次に溢れ出る涙の量は
決められていないんだろうか?
笑えるくらい溢れ出て来る……。
少し落ち着いた私の横に、何時からいたのか?
宇佐見さんが立っていた。
「うさ ―― いつ、から……?」
「―― 落ち着いたか? お前、目ぇ真っ赤」
宇佐見さんは、自分を見上げてる私を見て笑う。
私は手早く涙を拭い、性懲りもなく強がりを言う。
「ちょっと、悪酔いしただけだから……」
宇佐見さんは私の傍らに座った。
何も語らず、真っ暗な空を見ている。
何故泣いていたのか?
理由も聞かずに、ただ黙って傍にいてくれる。
私も何も話さなかった。
このまま何も話さずにいようかとも思ったけど、
こんな姿を見られてしまい、話さない訳には
いかない。
宇佐見さんにどう思われるか不安だったけど、
私はポツリ、ポツリと、晴彦との馴れ初めから
破局に至ったまでの経緯を全部話した。
「―― ふ~ん、若いながらもけっこうハードな生活
送ってたんだな」
「ハード、ねぇ……」
「けどよ……」
「んー?」
「普通ならずっとオフレコにしとくような話し、
オレみたいなおっさんにしてもよかったのか?」
「ん~……何となく、宇佐見さんには私の全部、
知ってて欲しかったかなぁ~って」
「そっか……そーいやお前ハラ減ってね?」
「ハラ?」
「関東煮食いに行こうぜ。オレめっちゃ上手い屋台
知ってるんだ」
「……うん、付き合う」