7年目の本気

「ねぇ、ちょっと早いけど朝ごはんにする?」


  壁の時計が午前5時の時報を打つ。


「水くれ」


  和巴はテーブル上のジョグからグラスへ水を注ぎ、
  晴彦の傍らへ跪いて水のグラスを差し出した。


「ハイ、晴彦さん、お水だよ」

「……の~ま~せ~てぇ? 和ちゃん」

「もう ―― っ」


  酔うといつも決まって、大人の駄々っ子と化して
  子供以上に手のかかる晴彦。

  こんな時は彼の事がほんの少し、
  可愛く見えてしまう私ってかなり末期かなぁと、
  自嘲的笑みを浮かべつつ、
  水のグラスを晴彦の口許へゆっくりと運んでいく。

  ――と、晴彦は自分で”飲ませろ”と言って
  おきながら、和巴の手は遮った。


「……晴彦、さん?」

「違うだろ? 飲ませ方が」

「!……」


  和巴は晴彦と手元のグラスを交互に見て、
  しばらく迷っていたが。
  やがて意を決して、グラスの水を自分の口に含み
  口移しで晴彦へ水を飲ませた。

  晴彦は水を飲み終えても和巴から唇を離さず、
  徐々に口付けを深くしていき。
  和巴のシャツのボタンを外しにかかる。


「ね、晴彦さん、今日は止めて? 学校あるし」

「それがどうした? オレはヤりたい」


  軽く何度もの啄むようなキスを繰り返し ――、
  やがてそれは、頬へ~首筋から胸元へと
  下りて行く。


「ん ―― ほんと、やめ……ン、あぁ……っ」


  弱いポイントの乳房を執拗に攻められ、
  和巴は抵抗するのを諦めて晴彦へその身を委ねる。


 ****  ****


  ”まな板の上の鯉”状態の和巴の華奢な体の上で。
  晴彦はブルリとその身を震わせた。


「あぁ ―― っふ……く ――っ」


  微かに痙攣した晴彦が和巴のナカに自身の白濁を
  勢い良く吐き出す。

  ゆっくり弛緩していく体で乱れた気を整え、
  晴彦が和巴のナカから自身を抜き出すと ――。

  避妊具なしセッ*スで中出しの白濁が、
  和巴のソコからトロリと溢れた。


  気怠そうに立ち上がって台所の冷蔵庫から
  取って来た缶ビールを飲みながら戻った晴彦へ、
  和巴が重い口を開く。


                      ※エブ・P5
「―― ね、晴彦さん?」

「んー?」

「今日ね、妙子叔母さんが遊びに来たの」

「妙子、叔母さん?」

「ほら、東京に住んでる ――」

「あぁ! あのいっつも光りもんジャラジャラ付けてる
 チョーお節介焼きの人か」
 
 
  その例えが当たらずといえども遠からずで、
  昨日自分が叔母さんと会った時のいでたちそのまま
  だったので、思わず和巴は小さく”プッ”と、
  噴き出した。
  

「で、その叔母さんがどうしたよ」


  今日の晴彦はいつになく優しいので、
  思い切って打ち明けようと、思ったが、
  それでもまさか”見合いを勧められた”とは
  言い難い和巴だった。
   

「……あ、あのね、実はその叔母さんから、お見合い、
 勧められてて……」
 
「な~んだそんな事か。深刻な顔するもんだから
 一体何事かって、流石の俺も身構えちまったじゃん」
 
「……」

「大方、あのお節介焼き叔母さんの面子もある
 ってんだろ? いいよ。この前みたく旨いもん
 食って、相手の野朗は適当にあしらって、
 帰って来りゃあいい」
 

   それは ”適当にあしらえる相手”ならばだ。
   
   
「ん……やべぇ ―― なんか、今夜は絶好調みたい」

「え?」


   言われた意味が分からず聞き返したが、
   自分の手を晴彦の昂ぶった下半身に導かれ
   理解した。
   
   
「も、晴彦ってば……」

「和巴、も1回シよ?」



  昨日、叔母から出された見合い相手の釣り書には、
  そうそうたる学歴&経歴と現在の役職が羅列されて
  いた ――。
  
  西の ”東大” と、言われる、
  京都大学藝術学部写真学科――主席卒業。
  
  東亜銀行本社へ入行。
  
  ”商品企画””M&A関連業務””営業統括”などの
  部署勤務を経て、ニューヨーク支社へ異動。                      
  
  ここで写真家のアラン・パウエルと出逢い、
  軌道修正。

  **年間勤めた東亜銀行をあっさり退職し、
  報道カメラマンへの道を進み始める。  
    
  現在、㈱ **通信社、東京本社、
  報道企画制作部勤務。
                
    
  そこまで読んだ時点で、和巴は
  ”うわぁ~~っ、こりゃダメだ。今まで会ってきた
   人達とは格が違い過ぎる!”
  と、思った。
  
  相手の容姿は文句のつけようもなく”特Aランク”
  
  こんな人がどうしてお見合いなどに頼るのか?
  不思議になるくらいのイケメン。
  
  そして、自分との”釣り合い”から考えても、
  大きなギャップを感じずにはいられなかった。
  
  だが、容姿だけは自分のタイプど真ん中。    

  晴彦の言うよう、
  旨いもん食べて、相手の青年は適当に
  あしらえればいいのだが……。

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