7年目の本気
花火見物のあとは成り行きで宇佐見のマンションへ
雪崩れ込み、
深夜の一室で妙齢の男同士が、
一升瓶からそのまま冷酒をコップに注ぎ酌み交わし
大盛り上がり。
「―― あぁ、もうこんな時間。楽しいけどそろそろ
寝なきゃ」
和巴はココへ来る前立ち寄った関東煮の屋台でも
結構な量飲んでたから
もう放っておいても瞼がくっついちゃうくらい
眠たくって。
ゆらゆら舟を漕ぎ始めて……
不意に温かな感じに包まれたと思ったら、
そこは宇佐見の腕の中で……
「……気持ち、いい……」
「ホント?」
「ん、んん……ね、もっと、ぎゅーして……」
なんて、図々しいリクエストをしながら、
宇佐見にギュッと抱きしめられたまま、
夢の谷底へ落ちていった。
*** *** ***
ふわぁ~~、良く眠ったぁ~……。
この2ヶ月間の忙しさ帳消しにするくらい
爆睡したよ~。
なんせ、季節の変わり目は中途編入の新入生の
学内案内やら、ゼミの発表会と勉強会も
目白押しで寝る間もなかったもんね
気持よく体を伸ばしながら大アクビをかまし、
あ、れっ?
この薫りは……コーヒー?
うん、飲みたいかも。
そこで、ふと我に返り、この室を見回す。
ホテルでも旅館でもない、
あまり見覚えのない天井……
寝心地の良いベッド……はっとして半身起こした。
ココは、宇佐見さんのマンション?
私ってば ”まさか”の寝落ち?
きゃぁぁぁ~~っっ!! 恥ずかしぃっ!
とりあえず現状を把握する為、もう1度ゆっくり
室内を見渡す。
白と黒を基調とした、シックなオトナの雰囲気漂う
シンプルなベッドルーム。
必死に昨夜の記憶を辿る ―― が、
お祭りから戻った後、彼と冷酒を酌み交わし、
かなり盛り上がったところまではおぼろげに
覚えている。
問題はそこから先、何がどうして自分がここで
目覚めたのか? という事。
恐る恐る自分自身をチェック。
よし、異常なし。
お見合い相手と云えど、
あんなイケメンに自宅へ招かれ
(連れ込まれ?)
一緒に酒を飲んで一夜をひとつ屋根の下で
過ごしたのに、何もなかったのは、
お年頃の女子としてどうか? とも思うが、
自分の中でそうゆう行為はとても神聖なもの
であるべき、という信念というか
執着みたいなものもあるから、
酒に酔った勢いでイタしてしまうなんて事は
あってはならないのだ。
とにかく、何事もなかった事にひと安心して、
ベッドから出て、寝具の乱れを整え、
部屋のドアノブに手をかけた。
―― カチャ
ドアを開け階下へ降りれば、
ますますコーヒーのいい薫りに包まれた。
整然としたLDK。
出窓の方から風がフワリ、と吹き抜け ――
私の髪も風にそよいだ。
気持ち、い……
その出窓の所で佇みコーヒーを飲んでいるのは
密林の王者 ―― ではなく、四十路間近の
中年親父。
けど、1枚の絵画のような情景に、
目も心も一瞬で奪われた
「すてき……」
その声で彼も私に気が付いた。
「あ、おはよ。昨夜はよく眠れた?」
「うん、1年分くらいはぐっすりと」
「そ。そいつぁ良かった」
けど、彼は目の下クマになってるみたい
眠れなかったの?
あっ! ひょっとして、私のせい……
「……どうかした?」
私は何か不思議なチカラに引き寄せられるよう、
彼の方へ歩をすすめた。
私が辿り着くのを待ちかねたかのように、
手が伸びてきて、私の腰に回り……ムギュー……
「もし嫌だったら突き飛ばしてもいい」
あ、この声、好きかも ――
偶然ご本人ともこうして深く知りあえて……
「私の方こそ、勘違いしちゃうかも……」
「勘違いって、たとえばどんな?」
彼が喋る度、その吐息が耳元を掠め
何だかこそばゆい。
「……宇佐見さんの、いけず……」
「っっ……」
「宇佐見、さん?」
「ご、ごめん」
「って、何に?」
「せ、洗面所はあっち。新しい歯ブラシあるし、
洗顔フォームもあるから」
そう言って私の体を回れ右させ、自分も洗面所隣の
小部屋(トイレ)に駆け込んでいった。
変な宇佐見さん……。
*** *** ***
さてさて、トイレにこもった宇佐見は、
すぐさま、荒々しい手つきでチノパンと下着を
一緒に下ろし、便座に腰掛ける。
見ると、ソレはすでに猛っていた。
和巴によってこんな風になってしまったと思うと
不本意で、雑な手つきで欲望を握り締めて
上下に扱く。
―― いつもより硬いように感じるのは
気のせいだろうか?
いや、気のせいであってくれ……
昨夜の和巴の醜態を思い出し、
動かす手を止められない
ドクドクと脈打つソコは、硬さと質量を増していき
先端は水気を帯びて動きがスムーズになっていく。
「はぁはぁはぁ ――」
――マジ、今朝のオレは本当にどうかしている。
いつもなら、こんな早くにイクなんてこと……!
『宇佐見さん』
さっき和巴が自分の名前を呼んでくれた
時の声が蘇り ―― その瞬間、果てた。
欲望を吐き出して我に返った宇佐見は、
自分のした事が居たたまれなくなってくる。
あまりのショックで、膝に手を置いて項垂れたまま
しばらく動けなかった。
こんな朝っぱらに、彼女オカズにヌくなんて、
オレってサイテー……