7年目の本気
姉夫婦が開業予定のホテルは元々大手建設会社の
 保養所として使われていた建物で。
 
 古い知人からここを安価で買い取った皓兄さんの
 指示で改装工事が着々と進められている。
 
 今は大工さん他業者さん達の小休憩タイムらしく、
 現場にはのんびりした雰囲気が流れていた。
 


「ただいま……」

「もうっ! 何がただいまよ。今頃何しに来たの」


 開口一番、怒られた。


「ごめん……ずっと宇佐見さんと一緒だったの。
 就職したら使う洋服とか、新居で使う家具とか
 彼に選んで貰ってて……」
 
「なんだ。そうだったの。じゃあ、電話なんか
 しちゃって邪魔したね」
 
  
「ううん、そんな事ない。あ ―― 彼も来てるの。
 送ってもらった」

「はぁ?! それを早く言いなさいっ!」


 千早姉ったら驚いてバタバタと外に出て行いった。
 

 外では匡煌さんに千早姉が挨拶をしている。


「不束な妹ですが、
 どうぞ遠慮なく鍛えてやって下さい」
 
 
 ん?
 何を鍛えろと言うんだ??
 
 
「はい。和巴には私も大いに期待しています。
 もう、引越し準備は出来ているというので、
 今日荷物を車に乗せようと思いますが、
 大丈夫でしょうか?」

「はい、お気遣いありがとうございます」


 匡煌さんと実家に行き、
 まとめている荷物を車に積み込みむ。
 手伝いに駆けつけてくれた真守と**に、
 処分する荷物を託した。
 

「卒業までは、店を手伝いに来るから」

「オッケー、頑張ってね和ちゃん」

「あんたも勉強しっかりね」

「うん」



 車に乗り込んで、
 2人が見えなくなるまで手を振って、
 私は座席にもたれ込んだ。


「いい家族だな」


 匡煌さんが微笑む。
 
 
「ふふ ―― でしょ?」


< 46 / 80 >

この作品をシェア

pagetop