7年目の本気
まだ心配気な利沙とは途中で別れ、
 とりあえず1人なって少しでも気持ちを
 落ち着かせようと公園へ入ったところで
 千早姉から電話が入った。
 
 
『―― あんた宛に学校から速達が届いてるわよ。
 旅行から戻って渡そうと思ったけど、至急って封筒に
 書いてあるわ。どうする?』


 至急?
 速達にするほど急ぎの用事なら学校で直接
 言ってくれればいいのに……


「OK、これからそっちに行くわ」
 

*****  *****  *****


 茶の間にはばあちゃんしか居なかった。


「千早姉達は?」

「明日が開業だから準備。ほら、学校からの手紙」


 そっか、**のホテル、明日からだっけ。
 

「ありがと」


 封筒を開けると、
 中には『交換留学の内定について』という表題の紙が
 入っていた。


 交換留学?


 『この度、香港(中華人民共和国香港特別行政区)と
  我が京都府が姉妹都市提携を結び。
  それを記念して交換留学生を派遣するにあたり、
  第1期交換留学生に小鳥遊和巴様の内定が決定
  致しましたので、ここに急ぎご連絡をいたします。
  つきましては、3月1日に海外交流振興課次長より
  詳しい説明を行いますので市庁舎までお越し
  下さい』


 内定? 申し込んでないけど?


「何だって? 学校は」


 祖母に手紙を渡すと、


「凄いじゃないか! 
 やっぱり『トンビが鷹を生む』って事もあるんだ
 ねぇ」


 超喜んでいる。
 孫が学校に認められていることが嬉しいらしい。


「けど、留学には大金がかかるし、
 就職も決まってるよ……」

「でもチャンスなんだろ?」

「今度の就職先は私を編集部へ配属したいって言って
 くれてるの。多分行かない。これ、千早姉達にも
 見せといてね」


 交換留学……魅力がないといえば嘘だ。

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