7年目の本気
洗面台で顔を洗い、
 鏡に映った自分に向かって言う、


「コラっ。しっかりしろ、和巴」


 自分で自分を叱咤して。
 
 各務グループ本社へ電話をかけた。


『はい、株式会社各務でございます』

「専務の各務広嗣さんにお取り次ぎ願えますか」

『恐れ入りますがどういったご用件でしょう?』

「小鳥遊とお伝え頂ければお分かりになると
 思います」


 『少々お待ち下さい』と機械的な返答の後、
 保留音が流れてきた。
 待つこと数分 ――


『お待たせ致しました、私各務の秘書をしております
 高田と申します』

「小鳥遊と言います。突然で申し訳ございませんが、
 今日各務さんはお時間おありでしょうか?」

『あいにく本日はスケジュールが詰まっておりますが、
 明日の午後3時にこちらへお越し頂くお約束でも
 宜しいでしょうか?』

「はい、結構です。では、明日の午後3時に」


 電話を切って、大きく息を吐いた。
  
 これでいいんだ、もう、後戻りは出来ない……。
  
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