7年目の本気
今日は3時に広嗣さんとの約束がある。
 大学での講義は5時限目まで。

 ゼミから出て、昇降口へ向かっている途中
 利沙が追いついてきた。


「部屋の事だけど、西院にあるシェアハウスでも
 良かったら今すぐ手配出来るってよ」


 西院かぁ……今まで住んでた撮影所前からは
 かなり近くて、ちょっと不安だけど……。
 

「雨風しのげれば十分。そこでお願いします」

「OK、じゃ、おとんの方からハウスへ連絡しといて
 もらうよ。現地へはそうだなぁ……*時頃に行くって
 事でいい?」

「うん。……利沙? ホントに色々ありがとう」

「いいってことよ~、困った時は助け合い~。あ、
 そうそう、新聞まだ見てないでしょ」


 と、利沙が差し出してきた、新聞の小さな記事を
 見て、私は思わず固まった。


「!そんな……」


 株式会社・各務

 本日付けをもって下記の者を懲戒解雇処分とする。

 役員・各務 匡煌

 
 同族の人間をただのクビ(解雇)じゃなくて
 懲戒解雇にするなんて……

 これは明らかに匡煌さんのカミングアウトに対する
 広嗣さんの制裁だと思った。


「大丈夫。宇佐見さんはこの程度でメゲる男じゃない」

「だといいけど……とにかく、これから広嗣さんに
 会ってくる」

「うん、気を付けてね。報告待ってるよ」
 
 
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