7年目の本気
持つべきものは寛容な友
卒業試験の勉強と英会話教室通いとで
 忙しい日々を過ごして。
 あっという間に3月下旬に差し掛かり、
 利沙と私は無事卒業が決まった。


「グットアフタヌ~ン!」


 利沙が喫煙所に来た。


「ハ~イ」

「もうぅぅっ! 
 何よぉ、その覇気のない返事は」


 笑いながら隣に座る。


「今日はもう講義ないっしょ? 何する? 
 夜、静流姉ちゃんから女子会のお誘いがあるけど」

「今から引っ越し荷物まとめて実家に送って。
 フィガロにも顔出さなきゃ」

「久しぶりなんとちゃう?」

「うん、たまには行かないとね」

「ほんなら、時間があったら女子会にもおいでよ。
 電話ちょうだい。場所おせーるから」
 
「了解」
 

 私はマンションへ帰り。
 実家へ送る荷物を持って近所のコンビニに向かった。


 **********  **********


「―― あら、真面目に仕事してるわね? 
 感心 感心」


  執務室に入ってきた静流が笑いながら言った。


「俺はいつも真面目だ」

「最近、特に真面目ね? どうしたの?」

「別に、普通だが」


 書類に目を通しながら答える俺を静流が
 凝視している。


「なんだ? 何か用か?」

「……婚約発表は26日だそうよ」


  26日……和巴と約束した日だ


「そうか」

「その日、食事会するって」

「俺は先約が入ってる。別の日にしてくれ」

「……誰と、会うの?」

「高校時代の友達」

「じゃあ、変更できるんじゃない?」


 静流がタバコを吸う。


「変更はしない」


 俺もタバコを吸い始める


「前の日でも良いんじゃないか?」


 俺はわざと聞いた。


「27日は私がダメ、和ちゃんと利沙の卒業祝いで
 食事に誘ったから」

「それを変更すれば良いじゃないか、
 その日じゃなくても構わないんだろ?」

「変更はしないわ、27日じゃなきゃダメなの」


 静流を見る。


「なぜ?」

「3人の都合が合わないの」

「……26と27日以外で食事会をすれば良い。
 そう広嗣に伝えてくれ」

「わかったわ」


 静流が部屋を出て行き、俺は息を吐いた。

 腹の探り合いだ……
 どうして、女はこうも勘が鋭いんだ
 
 俺はサイドテーブルの引き出しを開ける。
 和巴に買ったリングとピアスのセットを眺めた。


 26日は和巴が何と言おうと2人で東京を ――
 日本を出ようと決めている。

 誰にも邪魔される事のない海外で婚姻届を
 提出し、そのままハネムーンに出発。

 神宮寺との婚約発表があろうと俺には
 関係のない事だ。

 俺は和巴と共に生きる。

 仕事も、ある程度は片付けていかないといけない。

 静流が疑っている。

 俺は微笑みながら引き出しを閉めて
 仕事を再開した。
  
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