7年目の本気

 国枝の小父さん(利沙のお父さん)が手配してくれた
 部屋はシェアハウスと言っても従来の雑居型の物
 ではなく。
 集合玄関・LDK・バストイレ・ランドリー、等の
 共有スペースもあるけど。
 個人の居室にもワンルームマンションの設備がある
 タイプの物だった。

 最寄り駅にも商店街にも近いし、
 ここなら出発まで快適に過ごせそうだと思った。

 それに何より、私が注目したのは、
 入居者の約8割が留学生でその気になれば
 共有LDKで生の英語が学べるって事だ。

 今朝、マンションから宅急便で送った荷物は
 国枝家経由で部屋へ届けられていた。
  
 利沙・あつしと私は、近所のコンビニで
 弁当と酒の肴を買い、部屋で酒盛りを始めた。


「……けどさ~、宇佐見さんは大人しく引き下がる
 かねぇ~」


 と、彼なりに私を心配していたあつし。
 
 
「……結婚すれば……時が経てば、
 私の事なんかきっと忘れる」

「話しを聞いた限りじゃ、
 かなりあんたに入れ込んでるみたいじゃん?」


 利沙。
 

「……」

「本当のところ、和巴はどう思ってたん? 
 彼との事は遊びだった?」

「……いっそ遊びだって割り切れてたら、
 どんなに良かったかって思えるくらい、好きだった」


 しばらく間をおいて、あつしが呟いた。


「……胸、貸してやってもいいぜ」

「あ? 何しに?」

「お前、泣きそうな顔してるから」

「!!……」

「ガキの頃から人一倍泣き虫のくせして、
 こんな時だけやせ我慢すんじゃねぇよ」

「……」


 これまで必死にひた隠し、
 抑え込んでいた感情があつしの「やせ我慢するな」
 のひと言で、一気に溢れ出た。

 あつしは利沙と一緒に号泣する私を、
 子供の頃みたいにガシっと力強く抱き止めて
 くれた。
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