7年目の本気
和巴の後を追いかけたけど、通行人が邪魔をして
 匡煌は和巴の姿を見失った。


 まだ心臓が激しく脈を打っている……。

 体の震えも止まらない。

 久しぶりに見た和巴は変わっていなかった。
 話したかった……抱きしめたかった。

 忘れる事なんか出来るハズがない。
 こんなにも和巴を心から愛しているのにっ。

 匡煌は強引に気持ちを切り替え、
 本屋で静流の用事を済ませ会社へ戻った。


 ***  ***


 何も言わずに執務室へと入った匡煌を不審に思い、
 静流が後に続く。


「―― ありがと、
 結構気持ちよかったでしょ? 外も」


 分厚い本の入った袋を受け取った。


「まぁ、な。気分転換にはなった」

「お祭りは6時スタートだから、
 5時半位に迎えに来るわね」


 と、静流は戸口へ向かう。


「―― かずと会った」

「!!……それで?」

「追いかけたけど逃げられた」

「あっちは若いのよ、
 親父のあんたが敵うわけない」

「……あのまま1人逃げて、
 各務とも一生縁を切ろうかと考えた」

「バカ言ってんじゃないのっ。今さら何よ」

「分かってるさ。冗談だ、冗談……」


 ため息をつきながら出て行った静流を確認すると、
 匡煌はぐったり椅子に沈み込んだ。

 あの時、躊躇せず和巴を捕まえていたら。
 その足で東京を――日本を飛び出して行けたのに。

 各務を捨て、ずっと一緒にいられたのにっ……。

 叶わぬ事とは分かっている。
 和巴がそれを許さない事も分かっている。

 それでも俺は和巴と一緒にいたかった。

 女々しく泣き出しそうな顔を両手で叩き活を入れ、
 匡煌は残りの仕事を再開した。    
  
  
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