This Is Love Story
…禅くんの声だった……。
本当にそっくり…。
まるで目の前に禅くんがいるかのような錯覚に陥ってしまいそうになる。
「どう?すごいでしょ。
俺、声マネが得意なんだけど…この二人は特に得意なんだぁー。」
自慢げにそう言った郷田を、私は精一杯の強がりで嘲笑う。
「…はっ。使えない特技。
どうせならもっと必要な事を極めなよ。」
正直、かなりの動揺だった。
頭を殴られたせいで、吐きそうなほど視界が歪んでいる状況。
郷田の顔もぼんやりとしか映らない。
だからこそ、聴覚が脳にもたらす影響があまりにも大きかった。
その大きな動揺を見せないように、できるだけ強気な態度をとる。
「〝使えない〟ねぇ…。
それが、案外そうでもないんだよねー。」
「…どういうこと?」