This Is Love Story
「────…結衣。」
─────ドクン…
耳元で囁かれる、禅くんとそっくりな声。
…落ち着け。こんなことで動揺するな。
歪んで頼りにならない視界を閉ざし、他の感覚だけでニセモノの彼を感じる。
…全然違う。
禅くんの手はもっと冷たい。
腕ももっとガッチリしていて、抱き締められた時は、甘い香りがするの。
そして…彼はもっと愛おしそうに…
だけど少し切なそうに私の名前を呼ぶ。
なんだ…全く似てないじゃん。
「気安く触んないで。」
「結…──────グッ……」
懲りずに禅くんの声を真似ようとする郷田に、精一杯の蹴りをお見舞いしてやった。
「あんたみたいなゲス男と、私の禅くんを一緒にすんな!」
─────ブルルルルン……!!